バローダの月

バローダマリリンモンロー

映画「紳士は金髪がお好き」の中で、マリリン・モンロー「バローダの月」を身に着けて「ダイヤモンドは女の子の一番の友達」と歌う有名なワンシーンがあります。 バローダの月は、24.04ctのダイヤモンド。

満月を思わせるカナリア色のイエローで、しずく形のペアシェープカットにされています。 かつてはインドのバローダ藩王(マハラジャ)が所有していたダイヤモンドで、その名もバローダで見る月の素晴らしさに由来しています。 一時は、オーストリアの女帝、マリア・テレジアの所有となり、あのマリー・アントワネットの胸元を飾りました。 この神秘なる輝きは、「これを身に着けた女性は世界的に有名になる」という伝説を残します。

マリリンにとっても、このダイヤモンドは運命を変えた宝石でした。 これを期に新進女優だったマリリンの人気は絶頂になっていきます。

その後も、ビリー・ワイルダー監督の「お熱いのがお好き」では、偽の大富豪に、億をくだらないダイヤモンドのネックレスを贈られ、この映画でも、ダイヤモンドのイヤリングを揺らしていました。

庶民的だった彼女がつけることで、それまで手の届かなかった存在のダイヤモンドが庶民の憧れになっていき、ダイヤモンド業界を活発にさせたのです。 マリリンもダイヤモンドと結びつくことで、今までより何ランクも上の気品のある色気を漂わせた女優へと変身していきます。

しかし、日常生活では、マリリンは、宝石にこだわりませんでした。 フランク・シナトラに飛び切りのエメラルドのイヤリングをプレゼントされるのですが、彼女は一度つけたきり、それを誰かにあげてしまいます。

宝石は彼女にとって、マリリン・モンローという女優に変身するためのスイッチだったようです。

唯一、大事にしていたのは、ヤンキースのスタープレイヤージョー・ディマジオと新婚旅行で来日した際に日本でディマジオにプレゼントされた美しい真珠のネックレスだったようです。